breath
「これから前に進む明日美の隣に俺はいるかな?」
想定外の事を言われて言葉が出なくて。でも目を閉じて想像
目を閉じている私の唇に柔らかい感触のものが触れる

たぶん私が今一番欲しかったもの

目を開けると、樹さんが優しく私を見つめている
「どうしよう。また突然消えられても困る」
嫌味?
本心だと思う
樹さんが私に対して二年前の事を償いないたい気持ちはすごく伝わっている
でもそんな気持ちで接してもらっても、二年前からのしがらみから一歩も抜け出せていないのが現実で早く脱却しなければ前に進めない気がした
私が『前に進む』と言ったのは、その事も含めてだ

「もう二度と絶対消えないから。ずっと側にいるよ」
樹さんはそう言い、私の左手をギュッと握る
掌が汗ばんでいる
緊張している?
私はギュッっと握り返して微笑むだけにした
今、自分の気持ちを言葉にすると思いが全て伝えれるか不安だしちゃんとした一人の女性として見られてから伝えたい
今の病的な私じゃ相応しくない
「何かやりたいことある?」
散歩の帰り道、突然聞いてきた
やりたいこと・・・ある
さっき樹さんに触れられだけのキスをされてから私はおかしい
子宮の奥がギュッと疼く感じがする
確実に欲求不満
今は病気の療養中
言えることもせがむこともできない
「別にないですよ」
「本当?」
樹さんは私の心を読んでいるのかニヤッて笑った
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