breath
「飛ばされる?」
「加藤専務とやり合ったみたい。すごかったらしいよ。普通、取締役に盾突く?平社員なのにありえない。元愛人だから力があるとでも思っているのかしら?」
亜美は笑いながら言い
「怖ー。女って」
山下さんがワザと話に合わせておどける
「何があったの?松本さんと」
聞きますか?
本当は言いたくなかったけど
もう退職したし良いわよね
亜美に口外しないのを約束して話をする
専務が私を自分の秘書に戻そうと画策していたこと 
それを知った松本さんは私を罵り罵倒
内容があまりに酷かったので、私は衝動的に退職届を出して今にいたる
「女のやっかみって怖いわね。逃げて正解!だから明日美の選択は間違ってない!」

「そういえば、高宮がマンションを買ったの知ってる?」
「知りません!」
「あそこでしょう?会社から2駅先の、今建てているタワーマンション」
急にどうしたんだろう?
異動もないから仕事に本腰を入れようとしているのか
取締役就任の話もあるし
樹は私を探しつつ、前に進んでいる
逃げた私が言うのもなんだが、自分だけが取り残されたような気がして少し寂しい
でも自分が蒔いた種
引きつりながら笑顔で相槌を打つ
私は笑えていただろか?
懐かしく楽しい時間だったけど、最後は少し複雑な気持ち
二人と別れるときは、やけに一人になりたかった
そして自分の部屋で泣いた
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