大事にされたいのは君
当時を思い出して気まずくなった私が口籠ると、「みたいって何!」と、私を仰け反らせる勢いで追及させて、たじろいだ。
「な、なんかその、言った時はそんなつもりなくて…でも瀬良君の返事にガッカリして、あぁ、私は瀬良君が好きで告白して振られたんだなって…」
「そうだよな、そんな素振りなかったもんなぁ?つまりさ、その時は好きだと思って言って無かったって事…?」
「違っ、好きだから好きって言ったんだけど、なんか溢れちゃったというか、整理する前に表に出してしまったというか、でも結局友達だって言われたなら振られたんだなって納得したというか…」
「分かってたら振ってない。俺だってあの時勘違いしないように必死に言い聞かせたのに…何この無駄なすれ違い…」
お互い、どっと疲れた顔でハハッと乾いた笑いをこぼし合った。なんだ、あの時ちゃんと伝えられていればこんな事にはなら無かったのか。瀬良君は本当にずっと私の事を嫌っていなかったのだ。
「なんか安心した…」
それに、「俺も」と瀬良君が同意して、二人で照れ笑いを浮かべたところで「なんだそれ」と、呆れて物も言えないような表情をした兄が心底どうでも良さそうに呟いた。
「あー、マジで無駄な時間過ごしたわ。俺先戻るから」
「あ、待って下さい」
マンションへ入って行こうとする兄の背中に声を掛けたのは瀬良君だった。引き止められた兄は面倒臭そうにゆっくりと振り返る。
「吉岡さんが俺の所に来たのは、お兄さんの事情を知ったからです」
「…何?急に」
怪訝そうに答える兄と私も同じ感想を抱いた。瀬良君が今、兄にその話を出す理由が分からない。兄からしたら自分の事情の部分すらピンと来ていない様子だった。しかし、次に続いた具体的な単語に、兄の表情が変わる。