大事にされたいのは君
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「ねぇ、聞いた?瀬良の話」
「聞いたけど、あれマジなの?想像すら出来ないんだけど」
「あの瀬良が言ったらしいよ。俺のに話しかけんな、だって。度が過ぎた束縛怖いわー」
「でもさ、流石にこうなったら黙ってないんじゃない?アイツが」
「出た、自称瀬良の女ね。誰と付き合おうが何しようが瀬良は私の所に帰って来るって言ってたよ。ちげーだろ。てめーが空いた所に割り込んでんだろって話」
「あー見えて瀬良優しいから結局きっぱり突き放せないんだよね。それが奴をつけあがらせる」
「その時の彼女には手を出さないみたいな賢い所あるからね。でも今回はどうだろうね」
「明らか今までと違うからね。焦ってるらしいよ」
パタパタと歩き出した音にパタンと扉が閉じた音が重なって、私はジッと詰めていた息を吐き出した。個室のドアを開けて手洗い場で手を洗う。女子トイレは秘密の社交場だ。よく噂話をする女子を横目に通り過ぎて来たけれど、私に関わる話となればそうはいかない。こんな話の最中に堂々と個室から登場出来る訳が無い。だから彼女達の話が終わり出て行くのを存在感を消して待っていたのだけれど、その話は私にとってとても衝撃的な内容だった。
自称瀬良の女って誰?
今までも今も瀬良君に関わる女子を詳しく知らない。過去の事なんてもっと知らない。その女って人は私の知らないずっと前から瀬良君の傍に居て、今この時も瀬良君を想っているという事だ。…誰なんだろう。私の知っている人なのだろうか。
まさかこんな事を本人に聞く訳にもいかず、だからといってあんな事を瀬良君に言われた三好君にわざわざ聞くのもどうかと憚れ、そうなると朋花ちゃんに聞くのが正解だと解りながらもそのタイミングを逃しに逃し、結局ただただジッと瀬良君の周囲を観察する日々が続いた。