大事にされたいのは君
普通の人からしたら当たり前のようにも思える答えを、彼は物凄くスッキリした顔で真面目に呟いた。どうやら彼は本気で女子は好きになると皆束縛をしたがって、好きな気持ちが大きくなるにつれて束縛が強くなると思っていたらしい…何が過去にあったのかは知らないけれど、一体今までどんな女子と付き合ってきたのだろう。こんな勘違いをしてしまうほどの人数が皆そういう女子だったと、そういう事なのだろうか。
「全部を許して受け入れてくれてる人なのに俺もその人の為になれて、俺の事を必要としてくれる人。そういうのを探してたのかもしんない。誰かの一番になりたいって、そういう事だったのかも」
ーーその時、ぼんやりとしていた、けれど確かに求めていたものが形になった瞬間を見た。
「本当の恋が何なのか分かんないけど、別にもうどうでも良いーー吉岡さんが居れば、それでいい」
バチッと、火花のような熱くて眩い光が彼の瞬きと共に飛び散った気がした。その瞳の奥で生まれた赤い炎がじんわりと私の心にも火を灯す。
「…だから、私だけじゃ君は足りないんだって」
感じる自分の大きな動悸から目を逸らすように、誤魔化す言葉を口にした。そんな私に気づいているのかいないのか、瀬良君は笑った。
「そうだった。吉岡さんと、それ以外の全部だった」
悪戯に笑った彼の笑顔は何よりも楽しそうに、何よりも嬉しそうに、何よりも愛おしそうに私を見ていたーーそんな、気がした。彼にとっての私という存在が更に形を変えた、それだけはしっかりと、その瞳から伝わってきた。