大事にされたいのは君

まるで独り言のように呟かれた最後の言葉は、私宛なのか分からず返事が出来なかった。そうだとしてもどう答えていいのか分からない。過去の恋愛と私の気持ちを比べた結果の話…なのだろうか。

「やっと好かれるとダメになる理由が分かったわ。俺、相手に合わせんのが無理だったから上手くいかなかったんだ」

「……そう」

そんな事を言われたらむしろ友人関係だって危うい気がするけれど、と心の中で思うと、私の心情を察知した彼が慌てて言い分けのような言葉を付け足した。

「だってさ、優先順位とか出てくんじゃん。あと行動制限とか。なんか好きって気持ちが強くなればなるほど女子ってそうなる気がすんだけど、違う?」

「それは人に寄ると思うけど…」

「俺今までみんなそうだったんだけど」

「それは…君がモテるからじゃない?不安なんだよ」

「で、不安にさせる俺のせいって?まぁでも好かれてる証拠だって、付き合うってそういう事なんだって割り切って何度も試してきてダメだった訳がやっと分かった。始めから無理だったんだな」

「欲しいもんばっかで何も譲れないダメな俺には世界一向いてない」なんて、瀬良君は自嘲のような薄笑いを浮かべて言った。そんな風にネガティブな方向へ進んでいく瀬良君を見るのは珍しくない。これは私の前で見せる彼の姿だった。

「…そんな事無いよ。ただ君が今まで付き合った子が束縛するタイプだったってだけで、違う子も居る訳だし」

「うん。吉岡さんとかね」

「そう私とか……いや、私は彼女では無いけども」

すかさず否定すると瀬良君はクスリと笑った。隙ねぇなぁ、なんて。

「まぁでも良かった。束縛って女子にとって大事に思うからこそするものなんだって思ってたけど、そうじゃない人も居るんだな。俺は大事に思ってくれてても束縛されんのは無理で、好かれるのがじゃなくてそれがダメな原因だったんだ」
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