大事にされたいのは君

おずおずと私は視線を下ろした。情けなかった。なんとなく一年の頃の失敗を思い出して、重ねている自分がいた。何を言おうとしているのか、なんて答えればいいのかを探そうにも、この人には情報が無い。上手く出来る自信が無い。嫌われているようなのが怖い。

「半分正解」

すると、答えはあっさりと降ってきた。

「別に吉岡さんに悪い印象とかは無い。あいつの心配はしてるけど、それは吉岡さんにも同じ」

「私にも同じ?」

それってどういう事?と、今度はゆっくり視線が手元から三好君の方へと上っていくと、三好君は変わらぬ無表情で私の視線を迎え入れた。

「あんまりあいつに期待しない方が良い。傷つくだけだ、吉岡さんも、あいつも」

「…え?」

「あいつは他人から自分に向けられる気持ちに興味がない。無駄に優しいから勘違いする奴が多いけど、あいつはあいつのやりたいようにしかやらない。寄り添ってくるのだって特別じゃない、言うなら平等。平等に優しくて、平等に冷たい」

「……」

「あいつがあんたの為に動いてるのは自分の為でしかない。あいつの興味が他所に向いた時傷つくのは吉岡さんだよ」

そして彼はもう一度、ハッキリと忠告する。「だから吉岡さんも、あいつの勝手な行動に何かを期待してるならやめた方がいい」と。

期待…期待かぁ。三好君の言う期待に応えてくれないというのは、きっと瀬良君からの好意を素直に受け取った後の話なのだろう。私が彼の想いを勘違いし、次第に彼に求めるものが大きくなり過ぎて共倒れしてしまうのを三好君は止めようとしているらしい。私と瀬良君が傷つく事態を避けようと、彼は忠告してくれている。きっとそれは瀬良君を近くで見てきた三好君だから分かる事。何度も繰り返してきたと以前瀬良君が言っていた彼女とのやり取りも見てきたのだろう。それを繰り返さないように、今彼は私と話をしている。
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