大事にされたいのは君
クラスの中での彼、みんなに必要とされる彼、そんな彼にとっての私のあり方しか考えていなかった。みんなの求める瀬良 透の隙間を埋めてあげたい、私を頼ってくれる彼に応えたい、それが私の原動力で、彼との関係の答えだった…はずが、変わってきている。三好君と話した事で見えた冷たい気持ちが、三好君が見せた彼を大事に思う気持ちが、私に変わるきっかけを与えたのだ。
「…そうだね。今まで私、君自身の事を見て無かったんだ。だから今、君の事が知れて嬉しく感じてる」
「…うん」
「もっと君を大事にしたいと思ったのに、どうすればいいのかも分からない自分にガッカリした。結局君に求めさせる事しか出来ないなんて情けなくて…私ばっかり満たして貰ってて」
「……」
「そんなの、君の寂しさを埋める存在になんてなれっこないのに。大事にするなんて口ばっかりで、一番傍に寄り添う存在にすらなれないのに、でもその権利を誰かに譲るのは嫌だなんて…」
それはただの、私の我儘な独白だった。懺悔の気持ちで口にしていた。彼に求めてばかりだったのは私の方で、何の力にもなれていない現状への懺悔。
突如始まったそれを、瀬良君は黙って聞いていた。何を思っているかは分からないけれど、ただ黙ってじっと耳を傾けてくれていた。
「…私はずっと君を良いように使っていただけだ。始めはそれでも良かったし、そういう関係なんだって思ってた。でも、今は違う」
ーーそれは、たった今瀬良君が気づかせてくれた、私の彼に対して抱く気持ちだった。
私は今、彼との関係を違うものにしたいと思っている。
求めるだけ、求められるだけではない。お互いの欲求にしか重きを置かない関係は違うのだと、すでに私は分かっていた。だから、何か出来ないかと動き始めたのだ。
「私は、もっと君の傍に行きたい。今の私にとっての君を一番大事にするっていうのは、きっとそういう事。私にとっての答えはそういう事なんだって、分かった」
「……そっか」