大事にされたいのは君
手遅れな事を確認する為に彼と向き合う怖さより、今一度あの時のように私と向き合って貰う為のチャンスが欲しい。どんな答えが返ってこようと、それで最後にする。彼の望む形に。私の気持ちには区切りをつけた。あとは、彼にそれを伝えるだけ。彼との時間をもう一度。
「おはよう、吉岡さん」
「三好君、おはよう」
もうすぐ学校に着く、といった所で三好君と会った。いつものように挨拶を交わした後にそのまま歩き出すと、三好君も同じように隣に並んでついてくる。…どうしたんだろう。いつもだったらそのまま通り過ぎていくはずなのに。
「最近、透とどう?」
すると隣の彼から投げ掛けられたのは、今では今更だとすら感じる問いだった。瀬良君と二人で居る時間がついに無くなり、聞いたって何も話さない私に周りももう触れないでおいた方が良いという方向へ舵を切った、今はちょうどそんな時だった。今更周りの人間にそんな事を尋ねられるとは思いもしなかった。
「どうって…知っての通り何も無いよ」
三好君なら瀬良君から色々聞いているだろうに、何故今わざわざ私にそんな事を聞くのだろう。
「もう良いの?」
「良いって?」
「諦めた?それとも、面倒になった?」
そして私にジッと目線を合わせた彼は言った。「逃げたの?」と。
…逃げた?
「…そんな事、ない」
「そんな事ないよ」と、思わずもう一度口に出すと、私はじっと三好君を見据えた。この人が興味本位で首を突っ込んで来るような人では無い事を知っている。この言いようだ、私に非があるとこの人は確信していて、瀬良君との接点が無くなった今だからこそこんな事を聞いてきたのだろう。なんで今、ではない。今だからこそ、だったのだ。