大事にされたいのは君

「もし三好君に逃げてたように見えたなら、そのつもりはなくてもそうだったのかもしれない。今までの私は瀬良君の気持ちを知ろうとしなかったし、謝る事すら出来てないままだし…でも、今は違う」

私から目線を逸らさない三好君に、負けじと強くその瞳を見つめ返した。言葉だけでは伝わらない部分はきっとここに表れる。目を逸らしていては誰にも何も分かって貰えない。特にこの人には。

「ちゃんと区切りがついたの。だからもう一度、瀬良君と話そうと思う」

「区切り、ねぇ。向こうももう区切りついてるかもしれない」

「大丈夫。これが最後のチャンスだと思ってる。今まではその為に必要な時間だった」

「……」


スッと彼の視線が動いた。その先にはいつかのように瀬良君の後ろ姿。

「これ以上もたもたしてると、手遅れになるよ」

それは一体どういう意味だろう。何がどう手遅れになるのか、三好君は一体どこまで知っていてどんな意図を持って私に声を掛けてくれたのか。とにかく急いだ方が良い、瀬良君と関わる意思があるのならと、彼はきっと私に助言をしてくれている。

「…分かった。今日の放課後空いてるか聞いてくる」

小畑君と湯山君と見つけたあの日は、追いかけられなかった後ろ姿。今日はもう大丈夫。あの時の私とは違う。

大きく一歩足が出るとそのままの勢いで走り出し、彼へと向かっていった。近付くその背中に待ちきれずに声を掛ける。私の声に振り返った彼は驚いていたけれど、そんなことは関係無しに、一呼吸置く間も無く放課後に時間が欲しい旨を告げた。それに何を言うでもなく、呆気にとられたような様子の彼が一度頷くのを確認して、私は彼を追い越すように早々と教室に入った。これで約束は取り付けた。放課後が勝負だーー


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