Vanilla
スーパーに着くと、入口のカートとカゴ置き場を華麗にスルーしていく朝永さん。

勿論、奴隷の私の仕事ですよね。

私は目を細くしながら、カゴとカートを掴む。
朝永さんの前では絶対出来ない、ささやかな反抗。

中に入ると仕事帰りのスーツを着た人が多いが、夫婦らしき人もいる。
その人達は寄り添って会話している。
晩ご飯の相談をしているのだろう。
だが私のご主人様の朝永さんは、見当たらない。

あの人、嫌いな物無いのかしら。
あるなら嫌いな物を毎日食卓に出してやりたい。
でもそんなことをしたら追い出されるから出来ないけれど。

なんて考えながら食材を眺める。


『ドサドサッ』

すると突然何かがカゴに投げ込まれた。
見てみると、入っていたのは缶ビールと私の大好きなハーゲンダッツのバニラのカップが一つずつ。
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