Vanilla
「私、スーパーに寄って帰ります」

マンションがある駅に降りると私は朝永さんに告げた。
昨日買い物はしてあるが、早く一人になりたいから。
だって朝永さんと居ると苛々する。


「俺も行く」

「え」


予想外の返答に、私は思いきり目と口をパカリ。
埴輪みたいな間抜けっぽい顔になっていることだろう。


「何、その顔。不満なわけ?」

朝永さんの眉間に皺が刻まれるのを見ながら思う。

不満です。
不満しかありません。

「い、いえっ、滅相もございませんっ」

でも本心なんて言えるわけがない。
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