Vanilla
「食べろ」

その声にパクっとかぶりつく。

口の中は甘い豊潤で高級なバニラの味が広がる。


「もっと欲しい?」

優しく耳に届いた声にそっと目を開ける。


バクンと心臓が飛び跳ねる。

視界には、私に跨ったまま甘い顔で私を見下ろしている朝永さんが居たから。


この人、ワケが分からない……。

私に、興味なんて、ないんでしょ……?


「開けて」

朝永さんは私の心の葛藤など露知らず。
再びカップからアイスを掬うと私に差し向けた。

でも私は目の前の誘惑に負けて、次を求めて口を開ける。


「良い子」

優しく目尻を下げる朝永さん。
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