Vanilla
だって気付いてるとは思わなかった。
朝、何も言われなかったから。

昨日私は一緒に眠るのが気まずくてこっそりソファーで眠った。


「ちゃ、ちゃんとベッドで寝ましたっ。私がベッドに入った時、朝永さん眠っていたから気付かなかったんじゃないですか?」

私は早口で誤魔化した。


「ご主人様が気付かないとでも思ったわけ?」

確かに昨日から五度も最高気温がガクンと下がったから、タオルケットで寝たら確実に風邪を引くだろう。
それよりもだ。

朝永さんの声、さっきより近くない?


「オイ、聞いてんのか?」

真後ろから聞こえた低い声。

どうして引き止めるの?

焦った私は目の前のドアノブを握った。


「お風呂行きます!」

この状況から逃げることにした。
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