Vanilla
その言葉に弾かれるように俯いていた顔をパッと上げる私。
何故か楽しそうな顔をしている朝永さん。

「先に寝て下さいよっ」

何が楽しいの?
私は一つも楽しい事なんて無いのに!


「まだ今日のご褒美あげてないし」

カウンターに両肘をついて両指を絡ませた上に顎を乗せながら未だに楽しそうな顔を作っている朝永さん。

何を考えているの、この人……全く掴めない。


「そんなの、要りません!お風呂に行きますっ!」

耐えきれずに拒否して踵を返した。


「待て」

それなのに何故か引き止められて。

私はリビングの扉の手前で足を仕方なく止める。


「お前、昨日ソファーで寝ただろ」

背中に飛んできた言葉にドキリとして肩を竦めてしまった。
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