Vanilla
「朝永さん、予定あるみたいで……」

「え?朝永君、予定あるの?」

私が未だ呆然としていると穂香さんにも移った。

「みたいです」

心配を掛けたくなくて、私は平静を装って笑顔を貼り付けた。

「誕生日に彼女のつぐみちゃんと過ごさないの?」

だが、おかしいでしょと眉を顰める穂香さん。

私達が付き合っているならそう思うよね。
でも実際は私達は付き合っていない。

「あっ!ごめん!きっと仕事とか大事な用なんだよ!」

穂香さんは傷付いた私に気付いたようで慌てて取り繕う。
その反応にそういえば穂香さんにはちゃんと朝永さんの事を話してなかったなと思い出す。

私は人が居ないオフィスの隅に穂香さんを引っ張り、辺りをキョロキョロ見渡して誰も居ないのを確認すると口を開く。

「穂香さん……気にしないで下さい。私は偽物の彼女なんです」

「え?偽物?」

ポカンとする穂香さん。
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