Vanilla

「訳あって朝永さんの家に住まわせてもらう代わりに朝永さんの彼女を演じてるんです。でも私、朝永さんを好きになっちゃったんですけどね……あはは」

私は頭を掻きながら自虐的に乾いた笑いを出した。
笑わないと話せなかった。


「何それ……ってか、辛い事あるなら話聞くよって何度も言ったのに今まで黙ってたなんて！あぁ怒りたいんじゃない！つぐみちゃん、切なすぎ！」

怒ったり焦ったり、感情の起伏が忙しい穂香さんに最後にぎゅうっと抱き締められた。


「抱え込んじゃダメよ？」

温もりと優しい言葉に目頭がじんわり熱くなる。

「朝永さんのお家、もう出ようと思ってるので大丈夫です」

安心させようとしているのに顔に力が入らず、ぎこちない笑顔になってしまう私。
抱き締められてて良かった。

「全然大丈夫じゃない！」

私のために声を荒げた穂香さん。
そんな優しい穂香さんに益々目頭が熱くなる。