Vanilla
私は視線を落としながら朝永さんのことをフォローする言葉を出した。

そんな言葉が出たのは、誕生日を教えてもらえなかった事だけでも悲しいのに、夜の予定が忘れられない彼女のものかもしれないと思いたくないから。


「それなら仕事だからって言わない?つぐみちゃんが好きなら帰ったら祝ってくれとかさ?だってつぐみちゃん、誕生日のこと教えてもらってなかったじゃない」

穂香さんの言葉は先程から鋭い凶器。

私の心を痛い程抉る。


「つぐみちゃん、お互い本気で付き合ってると思ったから応援してたの。でも利用されてるだけなら辛い事言うけどさ、諦めようとしてるのは正解だと思う」

「……」

「ずっと私達言ってたでしょ?朝永君は本当に酷い男だよ。止めなさい」


穂香さんの言いたいことは分かる。
既に傷付いている私を気遣って、わざと厳しい言い方をしてるのも。
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