Vanilla
「朝永さん、忘れられない彼女が居るんですよ……」

「え?」

私の言葉に驚いた穂香さんは私の両肩を掴むと身体を離した。

「彼女と買ったらしきペアの食器があるんです」

目が合った穂香さんに笑って伝える。
すると穂香さんはうーん……と唸り出した。

「こんなこと、言うべきか迷うけど……言う」

途中言葉を濁したが、最後はハッキリとした口調。


「朝永君、今日その彼女と会ったりするんじゃない?」

「え」

真っ直ぐな目の穂香さんのハッキリとした口調と言葉に固まってしまう。


「誕生日って一大イベントじゃない。その日に予定があるなんてさ、疑わない方がおかしいじゃない」

「でも、仕事の付き合いかも……」
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