Vanilla
「た、ただいま帰りました」

顔はこちら側には向いているが目も合わないので、気まずくて声を掛けた。

「あぁ」

今日も目すら見ずに素っ気無い返事。

私はまずキッチンに入り、ケーキを仕舞った。
朝永さんがこちらを見てなくてケーキの箱を見られずに済んだのは良かった。
早速夕飯の準備に取り掛かる。

お米を炊いて、その後はサラダ作り。
ハッシュドビーフの鍋を取り出すと火にかける。

ほとんど料理は出来ているせいですぐに手持ちぶたさになり、掃除をすることにした。

リビング以外を掃除機をかけた。
キッチンは火をかけているから埃を立てたくないし、なにより朝永さんの前に行くのは気まずいから。


「朝永さん、夕飯にしましょう」

六時半、未だソファで同じ体勢だった朝永さんに声を掛けた。
少し早いが夕飯を出した。
やることが無くなってしまって気まずさしかないのと、シミュレーションした事をさっさと済ませようと思った。
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