Vanilla
荷物を全部持てと言われた通り、私は荷物を掴んだ。

といっても、全て火事で燃えてしまったので、とりあえず買った三着の服と下着と、火事跡から掘り起こした黒いアルバムと、仕事用の鞄だけ。
それらが入っている紙袋と鞄を掴むと、オフィスの出入り口の傍に居る朝永さんの元へと怒らせないために走る。


「お前、パジャマで行くわけ?」

「え?あ、そういえば、」


そう言われてパジャマ姿なのを思い出す。
朝永さんに脅えすぎてて気付かなかった。


「ま、良いわ。行くぞ」


朝永さんはそう言って踵を返すと再びオフィスを闇に戻すと扉を開いた。


えっ!?ちょっと!?


戸惑いながらもついていかないと怒られそうなので、とりあえず私は閉まりそうな扉をすり抜けて廊下に出た。


何処に連れて行かれるかは分からないけれど外に出るんだよね?

私、パジャマのまま!?

ついてこいって言ったけれど、どういうことだろう……。


二人きりの気不味いエレベーターの中で私は頭を悩ませる。
< 8 / 566 >

この作品をシェア

pagetop