once again
少しして、玄関のチャイムが鳴った。

き、来た。
深呼吸をして、ドアを開けた。

「こ、こんばんは」

「おぅ。1年ぶりか、案外元気そうだな」

「兄さんも、元気そう、だね」

ぎこちない挨拶が終わりに、兄が部屋に上がってきた。
右足を引きずる私に

「足、どうしたんだ?お前、瑠璃の話じゃ、如月商事の専務秘書だって聞いたけど、怪我するような事でもあったのか?」

カチャ…

「え?あ、」

コーヒーを入れようとしていた私は、聞かれたくない事を聞かれて、持っていたらコップを落としてしまった。

「なに、動揺してるんだ?お前、俺に遠慮してるのか?」

「え?な、なんで。兄さんに遠慮なんか…」

「してるだろ?家に帰ってこないのもそうじゃないのか?父さんも母さんも心配してるぞ?瑠璃は何かと帰ってくる事はあるけど、お前は家を出て行ってから帰って来ない、って」

心配か…
そりゃ、そうよね。
電話もしてないし。

「兄さん…」

「ん?それより、足どうしたんだ?さっきも聞いたけど、秘書の仕事で怪我したのか?」

「ちょっと、会社で蹴躓いたのよ。私の不注意で」

「そうか、そういう事にしとこうか。で、仕事どうなんだ?お前総務課で入っただろ?なのになんで、専務秘書なんだ?瑠璃が言ってたけど、急に決まったとか…」

「まぁ、フランス語話せる事バレちゃって…、逃げれなかったのよ」

「そうか、それなら納得か…」

♪♪♪♪♪♪♪

兄の携帯が鳴った。

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