恋・愛至上命令。
口に出したことで思い切りがついたのか、微かに息を吐いた気配のあと。晶は頬杖を解いて千也に真っ直ぐ向き直った。

「悪いな千也。そう言いながら、俺がお前の大事な女を泣かせてるのに」

「・・・カナならきっと分かってくれるし、一也(いちや)がいるからねぇ」

甘やかで麗しく整った顔に、儚げな微笑みを乗せた千也を晶が見つめる。

「恩に着るよ千也」

「ナニ言ってンの。恩返ししてんのはオレでしょ」

片目を瞑り、ふっと笑うと、何かを思い出したように千也は奥へと消えた。


一人残った晶は、グラスに浮かぶ濁り一つない透明な氷に目を落とす。

瀬里には初めから大島凪しかいないと分かってもいた。多分きっと、彼女の想いは遂げられる。瀬里もしなやかに強い。折れそうに見えて諦めることを知らないだろう。

「・・・女は分からないな。どうして泣かされてもそいつを赦すんだか・・・」

晶は唇から零れ落ちた言葉を自分で噛みしめるように、微かに顔を歪めた。

「莫迦だね。瀬里も・・・姉さんも」


愛してたのに。


聞き取れないくらいに小さな呟きはBGMと一緒に流れて。・・・消えていった。




【完】





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