君を借りてもいいですか?
結局、ずっと抱きしめられて下着を返してもらった後、手伝いをすると言う湊人をお断りし、一人で残りの洗濯物を干した。

全く、どうなってるの?

婚約者の役の私にここまでする必要はあるの?

そんなことを悶々と考えている私とは逆に湊人は私との距離を縮めようとしていた。

夕飯の支度を始めようとすると、案の定手伝うと言い出した。

だが、隣にいたら落ち着かないので却下する。

でも嫌な顔一つせず、「わかった」と言うと私が料理をしている姿をじーっと見ている。

「恥ずかしいからそんなにじーっと見ないで」

と言っても湊人には通用しなかった。

「何言ってんの。婚約者がどんな表情でどうやって料理するのか観察するのも婚約者役の務めでしょ」

「そうなの?」

こう言われちゃうともう何も言えない。

だって偽でも私たちは婚約していることになっている。

私の癖やどんなものを作るかとか一応知っておかないといけないもんね。

それにしても何でも婚約者ってワードを出せばいいってもんじゃない。

それに私だって湊人のことを知る必要がある。

そこであることを思いついた。

「ねえ!湊人って嫌いな食べ物とかある?」

すると湊人は「にんじん」と答えた。

よし!ここはギャフンと言わせるチャンスだ。
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