きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「……すいません、わたし、今まで原さんのこと、そんなふうに見たことがなかったので」
わたしは丁寧に頭を下げて言った。
なけなしの食欲は、すっかりラララ星の彼方へすっ飛んで行った。
「えっ、でも、井筒さん、いつも僕に微笑んでくれましたよね?」
原さんは意外そうにつぶやく。
「あれって……そういう意味じゃなかったんですか?」
……どういう意味?
わたしは怪訝な顔になる。
原さんは、わたしと真生ちゃんにとっては査定される「上司」にあたる人だから、そりゃあ無下にはできないけれども。
特に、真生ちゃんがなんでもズバズバ言う子だから、なるべく緩和させるようには接してきたつもりだが、わたしにとってそれは「ビジネススマイル」だ。
それを「そういう意味」に取られていたなんて。