突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜
「……だったら、これを機会に僕とのことを考えてくれませんか?」
……うーん、それは無理っ!
思わず、心の中で即答してしまう。
別に、原さんの容姿のことだけで、無理だと言ってるわけではない。
だって原さんは、わたしのあの「ビジネススマイル」だけで自分に気がある、って思ったんでしょ?
それだけでも、意思の疎通に難あり、なのに。
さらに、きっとこの人は、仕事中のそんなわたしを「井筒 櫻子」だと思ってるような気がするのだ。
三十二歳の今まで独り身のわたしが、せっかく娶ってくれるという人が現れたというのに贅沢なことだとは思うけれども。
逆に、この歳だからこそ、初めから薄々わかっている「過ち」に、自らダイブするわけにはいかない。
そもそも、わたしは石橋を気長にコンコン叩いてるうちに、ヒビを入れて崩落させてしまうタイプなのだ。