きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
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一人残された応接間で、ローテーブルの上のペアのマグカップを見つめた。

シンちゃんのがパステルブルーで、わたしのがパステルピンクという、ベタ過ぎるくらいこっ恥ずかしい代物だ。しかも、互いのカップを合わせると、取っ手の部分がハートの形になる。

わたしはいい歳して、こんなものを買うのはちょっと…と躊躇したが、シンちゃんはお構いなしに手にとってレジへ向かって行った。

ほんの、数週間前のことなのに……なんだか、ずいぶん前のような気がする。


あのあと、シンちゃんはしばらく呆然と突っ立っていたような気がするが、

『ごめん、櫻子……もう行かなくちゃいけないんだ。その話は……帰ってからゆっくり話し合おう』

腕時計を見ながらそう言って、結局はあわただしく家を出て行った。


今にして思えば、シンちゃんは初めから「行く気」だったのだ。

だって……そもそもスーツを着ていたのだから。
もともと、わたしと今日一日過ごすつもりはなかった、ということだ。

それに、わたしに対しては、いつもどこか遠慮がちな言葉遣いなのに……先刻(さっき)の通話では、結構ぞんざいな口調で話していた。


きっと、普段は……

「あおい」さんには……そんなふうに話すのだろう。

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