きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
考えてみれば、わたしは自分のことを無防備にもペラペラしゃべってしまったから、シンちゃんはわたしのことをよく知るようになったけれども。
わたしはシンちゃんのことを、老舗の文具メーカーである萬年堂で営業の仕事をしている、ということくらいしか知らない。
どこでどんな家庭に生まれて、どこでどんな育ち方をしたのかも知らない。
それどころか……
いきなりこの家で「同居」するようになるまで、彼がどこで住んでいたかすら、知らなかった。