きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜

わたしの脳裏に、昨夜の怖かった記憶が、ありありと甦ってきた。

警察は、この周辺をパトロールしてくれるって言ってたのに……

くちびるを強く噛みしめる。

だけど、いくらなんでも警察だって、こんなに早くには対処できないんだろう。
わたしだって、まさか、昨日の今日でまたやって来るとは、夢にも思わなかった。

なんで……だれが来たかを確認せずに、ドアを開けてしまったんだろう。

……後悔してもしきれない。

だけど、とにかく……
この場をなんとかしないと……っ!

とりあえず、わたしが今できることは、このドアを閉めることだ。

わたしは開け放ったドアの取っ手を握りしめ、必死でぐいぐい手前に引っ張った。痛めた左手首がずきずきしたが、そんなことは言ってられない。

なのに、原さんにドアを、がっ、と押さえられて、なかなか閉めることができない。

……ダメだ、びくともしない。

わたしは、凍りつく喉を励まして、大声をあげようとした。

そのとき……

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