きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「シンちゃん……
おうちに帰って……家族の人たちを……
ちゃんと大切にして……」
わたしは心底そう願って言った。
……心は引きちぎられそうだったけれど。
「僕は家族のことは大切にしてるよ」
シンちゃんは、ふっ、と気弱に笑った。
……わかってる。
赤ちゃんをを抱き上げてあやしていたシンちゃんの姿が、心を過ぎった。
「僕は櫻子のことも、同じように大切にしたいんだよ」
シンちゃんの視線がわたしに注がれる。
「だって、もうきみは僕の家族と同じだからね。……だから、婚姻届にサインして、本当の家族になってくれるよね?」
だが、その瞳は力なく揺れていた。