きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜

思わず、気が抜けてその場にへたり込みそうになるのを励まして、

「は…初めまして。井筒 櫻子と申します」

わたしもあわててお辞儀を返す。

今までは「区立図書館で司書をしております」と言えたんだけどな……まさか「無職をしております」とは言えないしなぁ。

「専務とは中学・高校のときの先輩・後輩の仲なんですよ。ですから、外ズラは『王子さま』でも、内ズラが『皇帝』なのは、よぉーく存じ上げております」

……やっぱり、「王子さま」と「皇帝」は「同居」してたんだ。

「……青井、余計なことはしゃべるな」

シンちゃんが地を這うような声で唸った。

「はいはい」

だが、青井さんはまったく意に返さなかった。
二人の間で十代の頃から培われてきた絆が見えた気がした。

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