きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「……櫻子……信じてくれる?」
シンちゃんは今までの「皇帝」ぶりとはうって変わった気弱な顔で、わたしを見つめた。
わたしは、しっかりと肯いた。
だけど……
「……そんな立派なおうちに、わたしなんか……ご迷惑になるんじゃ……」
シンちゃんがソファの前にあるローテーブルに置かれた婚姻届をひっくり返した。
半分に折られていたそれは、今まで【夫になる人】と【妻になる人】の面が表になっていたのだが、裏だった【証人】の面が目の前にあらわれた。
【葛城 肇】と【葛城 謙二】の署名が見える。
シンちゃんの父親と弟の名前だった。
「櫻子、それ以上まだ言うのなら、怒るよ。
青井の話を聞いたでしょ?
このとおり……うちの家はみんな、櫻子のことを歓迎しているんだ」
シンちゃんは婚姻届の【証人】の欄を、指でトントンと叩いた。
「むしろ、『なぜ早くうちに連れてきて紹介してくれないんだ』ってうるさくて、鬱陶しいくらいなんだよ?」