きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
実は……もう二年ほど、片思いをしている女性がいる。
二年前、僕は執行役員の営業事業本部長から専務執行役に昇進して、日夜「お目付役」の古参の重役連中から、イヤっていうほど「我が社の経営理念」をネチネチと叩き込まれ始めたときだった。
秘書の青井 脩平も(歳下のくせに)早く僕を「一人前の専務」にしたくて、躍起になって空回りしている時期であった。(ヤツだって「専務秘書」になりたてだったから無理もないが……)
ある日、彼とどうしようもないくらいに激しく衝突してしまい、僕は会社から飛び出した。
かといって、そうそう遠くへ行ってしまう「勇気」もない。周囲の意の添うままに生きてきた「長男気質」の哀しき性である。
なんとなく会社周辺をぶらぶらしていて、偶然見つけたのが、とあるビルの一室に入っていた区の図書館だった。さすがに、このスペースては「分館」である。