きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜

「……そう悪い素性ではないと思うけど?」

イケメンさん……もとい、葛城 慎一さんは苦笑した。

「ぜひ……お願いしますっ!」

真生ちゃんが、がばっ、と頭を下げた。

「まっ、真生ちゃん!?」

びっくりしたわたしは、やっと「再起動」した。

「櫻子さん、ずいぶんとベタな方法ではありますが、なにもしないよりはずっといいですよ。
やってみるだけやってみましょうよ。こうして『救世主』も現れたことですし。
……それに、櫻子さんが『結婚』したことにすれば、分館に来るサラリーマンたちに色目を使ってるなんていう、フザけたクレームや本館でのウワサも払拭できて、一石二鳥じゃないですか?」

真生ちゃんが立て板に水で、わたしを説得にかかる。

「だっ…だけど、よく知らない人を勤務先だけで信用するのは、ちょっと……」

わたしは小声でぼそぼそと言った。

だって、顔は見たことがあっても、ちゃんと話したのは今日が初めてなのだ。

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