突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜
「僕は君たちが困っていそうだったから、善意のつもりで申し出ただけなんだけどね。自ら『個人情報』を曝してまでもね。
……でも、肝心の櫻子さんが僕を信用してくれないのなら、別にいいんだよ?」
葛城さんがそう言って腕を組んだ。
ちょっとムッとした顔になっている。
たぶん、真生ちゃんが「ずいぶんとベタな方法」と言ってしまったこともいけなかったと思う。
いくら事実であろうと、言ってはいけないことがある。
「櫻子さんっ!葛城さんのせっかくのご厚意を仇で返す気ですかっ?」
にもかかわらず、真生ちゃんは怖い顔でわたしを睨んだ。
「あ、あの……すいません、ごめんなさい。
わたし、そんなつもりじゃ……」
そして、やっぱり……わたしが謝る羽目になるのだ。
「……だったら、僕が櫻子さんの『結婚相手』ってことでいいんだよね?」
葛城さんが、魅惑的な切れ長の瞳でわたしをじっと見る。
あ、左目の下にホクロがあるんだ。
涙ボクロみたいでセクシーだな。
……いやいやいや。そういうことではなく。
「……はい、お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」
だけど、結局のところ、わたしはとうとう深く頭を下げて「お願い」する羽目になった。