突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜

さすが天下のカルティエ様は、結婚を予定していると思われるカップルでいっぱいだった。
おまけに今日は金曜日だった。

なので、店員さんはほかの接客に追われているため、気兼ねすることなくマイペースには見られるのではあるが……

「あの……葛城さん」

わたしはおずおずと申し出た。
だが、カップルたちで店内は結構ざわざわしていて、わたしの声が届きにくい。

「えっ……なに?」

葛城さんはわたしの口元に耳を寄せる。

……わっ、近い、近い、近い。

だけど、勇気を振り(しぼ)る。

「あのっ、結婚指輪は『小道具』として大事なアイテムかもしれませんが、もうちょっとリーズナブルなとこでお願いできませんか?」

こんなハイブランドなフロアではなくて、もっと気軽なアクセサリーのショップが入る階下(した)のフロアにしてほしい。

「どうせ形だけのものですから、シルバーでもいいんです」

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