きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「……相手は?」
つぶやくように発したその言葉は震えていた。
「ここ二年ほど通われている、常連の利用者様ですよ」
真生ちゃんが、きっぱりと言い放つ。
「これまでの本館のウワサでは、どんなふうに伝わっていたか知りませんけど、櫻子さんは別に『色目』を使っていたわけじゃなく、利用者様のある方と結婚を前提としたお付き合いをしていただけです」
原さんが鋭い目で、わたしをじっと見つめる。
「だけど、この前二人っきりで会ったときには、
そのような人がいるなんて話は、まったくなかったですよね?」
……そうだ、あのときは「葛城さん」も「シンちゃん」も影も形もなかったのだ。
「そ…それは……」
わたしは口ごもった。