きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「……本館でウワサになってます。
井筒さん、結婚するって本当ですか?」
カウンターの前に立った原さんの顔は青ざめ、その唇は白くなっていた。
わたしが口を開こうとしたそのとき、
「そうですよ。でも、櫻子さんは『結婚する』んじゃなくて……『結婚した』んです」
真生ちゃんが間髪入れずに口を挟んだ。
そして「櫻子さん、ほら、アレを」と目で促す。
わたしは弾かれたように、左手をカウンターの上に置く。
その薬指には、カルティエのトリニティ・ウェディングが蛍光灯の青白い光にもかかわらず、きらきらと輝いていた。
原さんの細い目が、めいっぱいに見開かれる。