今日も今日とて、告りますのでご覚悟を。
カジュアルなお店がまるで似合わないその人は。
スーツ姿のままネクタイはしておらず、車のカギだけを手に持って、如何にも呼び出されてやってきましたといった風貌だ。十中八九、彩さんがメールで呼んだに違いない。
今まさに、恋愛休止宣言したところなのに!
着崩したスーツ姿の水瀬さんは破格の格好良さで、それに加え無造作な髪が妙に色っぽくて、ドキドキするなって方が無理だっての。
好きです……!
叫びそうになる気持ちを寸前で押しとどめる。
「んー、貴司遅ぉい。さっさと来なさいよぉ」
「いいかげんにしろよ、飲み過ぎだ」
「なによぉ、紗夜ちゃんの前だからってカッコつけちゃって」
災難なのは、どちらかというと私ではなく水瀬さんではないか。
足元のおぼつかない彩さんを引っ張り上げるようにして担いだ水瀬さんは、自身のポケットからカードを取り出し、これで会計を済ませろとばかりに私に渡す。
「そんな、水瀬さんから頂けません」
「あとでこいつに請求するから、取りあえず払っとけ」
「でも」
「いいから。それで会計が終わったら外で待ってろ。そっちも俺の車で運ぶ」
そっちとは、藤原のことらしい。
机に突っ伏してぐでーんとしている藤原を指をさす際、袖の隙間から例の腕時計が見えた。