今日も今日とて、告りますのでご覚悟を。
水瀬さんのことが好きだなぁーと思う理由のひとつ。
見ていないようで案外ちゃんと見ててくれるところ。
随分楽しそうに飲んでいたくせに、こっちにも目を向けていてくれたなんて、ずるい。それだけで、今日、頑張って良かったって思える。
「綺麗な月ですね」
「あぁ」
「今の、告白ですよ」
「それなら青くないな」
「どういう意味ですか?」
水瀬さんは形の良い唇を軽く緩ませただけで、ふぅーと煙を吐いた。
質問に答える気はないらしい。
だけど、そんな仕草も私には大人に見えて、カッコ良くて、こんな素敵な人と運命的な出会いをしたのに、どうして彼はそのことを覚えてないのだろうと残念な気持ちになった。
――――あの日、初めて水瀬さんに会った日。
本音をいうと、初めは少々軽いノリだった。
酔った席での「確信」 ほど、不確かなものはなく、それを熱っぽく語るほど子供でもない。
一夜限りの、とでも言えば大人っぽく聞こえるけど、それもどこか言い訳じみていて胡散臭い気もする。
突然キスをした私に、彼は冷めた瞳で受け流した。