王子様とブーランジェール
思わずしゃがんで身を隠す。
なぜか心拍数が上がり、ブルッてしまった。
な、ななな何で!
なぜ他校の女子が?
なぜ他校の女子が俺目当てに学校に押し掛けてくるんだ?!
だ、誰あの人たち!見たこともない!
今、何が起こっている?
もしや、宇宙人が攻めてきたのか?!
俺、これから何をされるんだろうか?!
「うわー。あの女子たち、夏輝のファンだったワケ?」
「おおっ!どんどん沸いて出てきたぞ?みんな手を振ってるわ!」
「夏輝、みんなおまえを待ってるぞ?姿晒してお手振りしてやれば?皇族ファミリーみたいによ?」
俺の友人たち、何を呑気なことを言ってるんだ!
これから俺は、UFOに乗せられ拉致されるかもしれないというのに…!
突如として涌き出てきたファンの女子たちと、宇宙人と掛け合わせて恐怖の板挟みを感じていた時。
大河原さんが言っていたことを思い出した。
『栄誉ある称号の裏は…女子生徒の餌食ってヤツだ。事あるごとに、あちらからこちらからファンが涌き出て追いかけ回されるわ、もみくちゃにされるわ、終いにはファン同士で抗争が起き、先代ミスターの時は、救急車が学校に来たぞ…?』
それは、こういうことだったのか…!
じゃあ、何?
この後、戦争が起きて救急車が来る予定?
『夏輝様ぁっ!お顔出してくださぁーい!』
『…ちょっと!押すんじゃないわよ!あんたどこの誰!』
『何よ!あんたが先に押してきたんでしょ!』
危惧した通りの争いの声が耳に入ってきた。
え。何?本当に抗争…戦争起こす要素あり?!
マジか。どうにかせねば。
だって、俺が原因で集合しちゃってるんだろ?この宇宙人…いや、女子たちは!
自分が原因なのだから、自分がなんとかせねばならない。
そう思うと、立ち上がって窓から顔を出す。
再び姿を現した途端、下から女子の『きゃーっ!!』という黄色い声がわき上がっていた。
なぜ、そんなに俺に…!
意を決して、下にいる女子たちに呼び掛ける。
「部外者は立ち入り禁止ですよ!みんなの迷惑になるんで帰って下さい!!」
俺の怒鳴り声に、ギャラリーは一旦静まる…が。
『…きゃああぁっ!何か喋った!喋った!素敵ぃー!』
『良い声してるー!そそられるー!』
『きゃああぁーっ!!』
効果なし!
しかも、あんだけシャウトしたのに、『何か喋った』で済まされた…!
ガーン!!