王子様とブーランジェール
どよめき始めている女子宇宙人集団だったが、対する小笠原は閉じたままの扇子を手の平に収めるようにして、パン!と音を立てた。
『はい!ご理解頂けたなら、午後3時半にここに再び集合。それまでは最寄りのイオンで時間を潰しなさい!以上!解散!』
そして、扇子を滑らかに開いて『オホホホ!』と高笑いを始めていた。
どこまでも勝手に話を進めて高笑いだな。もう鉄板だ。
このお嬢様といったら…。
それから、俺に会いに来ていた女子集団は、パラパラと順に散って行き、やがていなくなった。
…って、すごくね?
ものの数分で撤収したぞ?
小笠原の仕切り力、半端ない。
あんな説得?泣きの脅迫?で、撤収しちゃう宇宙人も宇宙人だ。
しかし、俺は聞き逃さなかったぞ?
《午後3時半にここに再び集合!》
って、なぜまた集合させる?
これはもう、嫌な予感しかない。
まさか、朝の再来では…!
ああぁぁ…なんてことをしてくれるんだ、小笠原。
俺のスケジュール、勝手に決めやがって…!
とんでもない結末にひっくり返ってしまったことに、悲しみに打ちひしがれるしかない…。
理人が耳元で『夏輝様は大変悲しまれることでしょう!』と、小笠原のモノマネをしてくる。
でしょう!じゃなくて、もう悲しんでる…。
「終わった終わった。教室でおやつでも食べるか」
「夏輝の貢ぎ物のパンいただかねえ?近日食わないとヤバいだろ。な?夏輝」
咲哉と陣太が窓から離れて教室に戻ろうとする。
「確かに。1日経つと味落ちるからな」
「桃李にも分けてやったら?」
「またデブるぞって」
二人の後に続いて、理人と教室に入ろうとした。
また、その時だった。
「あ、あの、竜堂…」
呼び掛けられて、顔を上げる。
(あっ…)
そこには、またしても。
男子生徒だ。
口元には絆創膏が貼ってあって、その周りがほんのりと赤くなっている。
細かい擦り傷もある。
中肉中背で襟元のバッジは、青色、2年だ。
「これ…」
ムスッとした表情のまま、二つ折りの紙切れを渡される。
また…!
「………」
無言で恐る恐る受け取り、中を開いてみる。
やはり…!
「…《ミスター出てこいや!》?…またこれ?」
「…見んな!」
理人が図々しく、その紙を覗き込んでくる。
勝手に見るな!