王子様とブーランジェール
その一言に追い討ちをかけられたかのように、グサッとくる。
いや、俺もそれはなかったと反省していたところだよ。
何も言えないで、ただうつむいていた。
「神田もあいつなりに、夏輝のこと心配してたんだって」
「…は?俺?」
「ほら、夏輝が元気ないとかぼやいてたし、この事件のことも知ってたしな。うちの男子を狙って夏輝が挑発されてるのも知ってた」
「………」
まったく、普段周りに気が付かないくせに、なぜそういうことには気付いてしまうんだろうか…。
「奴らに飛び掛かって行ったのも、単に俺がやられそうになったからってだけじゃないと思うけどな…」
「何だその意味深発言」
そう口にすると同時に、後ろから頭頂部にゴスッと痛みが走った。
ビックリして振り返ると、背後には理人が立っていて、更に驚かされる。
この野郎。後ろから頭にチョップしたな。
「…んだよ!急に!」
「心配されるとか、自分のことで手一杯とか、夏輝らしくないなー。だから喝」
「だからって、不意討ちにチョップしてくんな!」
「それに、愛する人がケガさせられて泣いてたら、そこはフツー怒るんじゃなくて、タイミング的には抱き締めるだろー?…あ、そこは夏輝らしいか」
「おまえなぁ…」
いや、ケガさせられたから泣いたのではなく、俺が…。
らしいのか、らしくないのか…。
「ちょっと、ダンナ!」
するとそこへ、松嶋がこっちにやってきた。
後ろには菜月もいる。
「何だよ」
「ダンナさー。あのみんなからもらった《ミスター出てこいや!》の紙、今家?」
「そうだけど…何でだ?」
「あれ全部上山さんに渡してくんない?事件のあった日にち、場所、人とか全部一枚ずつ記入してんだろ?」
「その情報、整理したら何か見えてくるかもしれません。ぜひお願いします」
「いいけど。じゃあ、家に戻って…」
「では、正晴にお願いして家までお送りします。…エリ!正晴借りても良い?!」
その話を離れたところで聞いていたのか、狭山はそこからガッツポーズをしている。
執事、簡単に貸してくれるわけね…。
「竜堂!」
その場所から、狭山は俺に大声で呼び掛ける。
「明日の放課後、家庭科室に来い!」
「…は、はぁっ?!」
「捜査会議、作戦会議だバカめ!絶対に来いよ?!」
会議?…本格的だ。
こいつらは、どんな時も本気度が高い。