王子様とブーランジェール
それから、家にあの紙切れたちを取りに行くために、菜月と狭山の執事の車に乗り込む。
初めて乗る高級車・おベンツに意味もなくドキドキしてしまったが。
陣太と理人も、もう帰宅するとのことで、二人とはそこで別れた。
家に到着すると、菜月には車で待っててもらい、あの紙切れを入れてためておいた袋を渡す。
一枚開いて読んでいたが、「随分几帳面ですね」と言って菜月は車で去った。
その直後に、理人から連絡が入る。
『桃李は大丈夫みたいだよ』
帰りにパンダフルに寄ったのか。
様子、見に行ってくれたのか…有り難い。
「………」
ケータイを開いたまま、その連絡の画面をボーッと見つめる。
他人の心配をする前に、自分の心配をした方が良いメンタル状況だが。
でも、桃李に心配されるとか、自分で手一杯のこの状況はらしくないという。
どうしたら良いかとも思ったが、この事件の状況が一気に動いてきた。
これはもう…突き進んでいくしかない。
狭山ら残党の手を借りようが何しようが、まず優先すべきことは、この事件の解決だ。
懺悔や反省会は、後。
事件解決したら、いくらでも懺悔と謝罪をしてやる。
放課後、捜査会議か…。
そんなワケで、すみませんが今日も部活に出れそうにないです。
と、昼休みにわざわざ2年1組へ行き、キャプテンの十津川さんに報告したところ。
『…お、聞いてる聞いてる。捜査会議だろ?いいぞ。心配するな。男子生徒襲撃事件、早く解決しろよ?』
と、肩を叩かれた。
え。何で知ってるんですか。
誰から聞いてるんですか。
『竜堂ぉーっ!放課後の会議、サボんなよぉーっ!』
誰と問うまでもなく、こいつか。
美梨也、十津川さんの後ろから突然登場した。
あなた達、ホントに仲良しなんですね。
しかし、仲良しがもう一人。
更に美梨也の後ろに待機している。
俺を横目で睨んでいる…。
藤ノ宮律子…。
『…あ、律子、さっき竜堂の悪口言ってたぞ?高慢ちき野郎ってさ』
十津川さんがそう言って笑うと同時に、藤ノ宮は鼻でふんっと笑い、その場を離れる。
っていうか、そんな情報いらない…。
どうしてこうも嫌われてるんだろう。
別にいいけどな。
万人に好かれるほど、完璧じゃねえし。