王子様とブーランジェール
「…あれ?」
走り込んできて、俺の横で息せきかけている女子生徒が二人。
しかし、それはとても馴染みのあるクラスメイトで。
「…菊地さんに、尾ノ上さん?」
俺の可愛い桃李のお友達であるこの二人。
なぜここに?
「菊地、尾ノ上、ここは家政サークルじゃないよ」
理人も二人に気付いて、声をかける。
「あ、竜堂くん、和田くん…」
「そ、それはわかってるの…」
そして二人は言いづらそうに俺達を見ている。
まさか。この二人。
「ご、ごめん、竜堂くん…私達、先代ミスターのファンクラブのメンバーなの…」
「え…」
桃李の友達、であるがために。
一瞬、フリーズしてしまった。
え。この二人。そうだったの?!
「…えっ!嘘っ!」
驚きは一気に沸き上がってきた。
桃李の友達が…残党のメンバー!
で、なぜごめんなんだ。
このお仲間であることに、少なからず後ろめたい気持ちがあるんだろうか。
「中学時代に先代の存在を知って、そのお素敵な魅力に憑りつかれてファンクラブに入ったんです…」
「で、先代は卒業しちゃったけど、どうしても先代のいた高校に入りたくて受験したんだ」
「そ、そうなんだ…」
と、しか言えないだろうが…。
しかし、狭山の愉快な仲間達が、桃李の友達…こんな身近に凶悪集団のお仲間がここに…。
桃李、知ってんのかな…。
すると、駆け込みセーフで慌てている二人を狭山は笑う。
「バカめ!掃除当番なら許す!先代もきちんと掃除当番には参加しておられたぞ!」
「は、はいっ!すみません狭山さん!」
尾ノ上さんが横で理人に「和田くん、掃除サボらないでよ!」と、怒っている。
そして、「それじゃあ…」と、狭山が言いかけた時、またしても滑り込みセーフで登場した者がいた。
菊地さんと尾ノ上さんの後ろから現れる。
だが、滑り込みセーフのくせに偉そうだ。
「狭山さん、私も参加させてもらうよ?先代ミスターからのミッション」
声を聞いて、体がビクッとした。
おまえ、ここでも現れる?
「…あぁ?律子か?何しに来てんだおまえわ」
突然堂々と現れた藤ノ宮に、狭山もビックリだ。
しかし、藤ノ宮は当然のような態度だ。
「私だって、先代ミスターに助けて貰ったご恩がある。だから今ここでご恩を返したい」
「おまえなぁ…」
先代に助けて貰ったご恩?
藤ノ宮と先代ミスターに何があったかは知らないが…。