王子様とブーランジェール
しかし、もう一人。
滑り込みセーフの存在が。
藤ノ宮の後ろに、さりげなくいる。
…俺的には、こっちの登場の方がビックリした。
なぜおまえが…!
「…あぁ?そこにいるのは松嶋か?紋中ヤンキー」
恐らく、松嶋の登場にもビックリしただろうが、なぜか狭山は松嶋には不敵な笑みを浮かべる。
「狭山さん、俺も話聞いていいでしょ。昨日の連中捕まえたの俺だし」
両手をポケットに入れて、壁に寄りかかった松嶋。
すると、狭山は笑い出す。
「…参加しても構わんぞ?ヤンキー松嶋。おまえは仕事が早いからな?それとも私へのご恩か?あぁ?」
「いや、困ってるダチのために。まあ、狭山さんへのご恩でもいいけどね」
そう言って、松嶋はこっちをチラッと見る。
俺…?
…そうして、軽く40人はいる残党のメンバー(菊地さんと尾ノ上さんを含む)と、俺、理人に松嶋、藤ノ宮を交えて。
男子生徒襲撃事件の捜査会議(…)が始まる。
「…まずは、昨日夜遅くにも関わらずに情報収集、みんなご苦労だ」
「はいっ!」
「…ん?」
狭山は周りに集まっている残党メンバーを労っているが。
「夜遅くに情報収集?」
思わず疑問を口にしてしまった。
すると、菜月がパソコンを叩きながら一言添える。
「ナツキくん、昨日ナツキくんから預かったあの紙切れを元に、みんなでもう一度被害者への聞き込みを手分けして行ったんです。より詳しく」
「…えっ!は、はぁっ?!」
より詳しい被害者への聞き込み?
この、女子たちが?
何て行動力…!
「みんなが聞き込んでくれた情報はまとめてあります。先程、顧問にも送信しました」
出た。顧問。謎のキャラクター。
狭山のカレシ…。
そして、菜月は自分のパソコンの画面を俺達や残党メンバーたちの方に向ける。
「顧問と連絡が取れました。それでは会議を始めます」
すると、パソコンからポーンと音が鳴る。
これは、テレビ電話?パソコンで?
そして、画面が変わった。
画面の向こうに映し出されたのは。
…え?犬?
画面いっぱいに映り込んでいたのは、一匹の犬だった。
ポメラニアン?
頭の毛が赤のチェックのおリボンで結んであり、カメラを覗き込んで、わんっ!と吠えている。
あれ?この犬…。
これが、残党の顧問?
犬?
狭山のカレシ、犬なの?