王子様とブーランジェール





『でも、札幌の公共機関は地下鉄とJRだけじゃない。バス路線が広く分布している。しかし、その《道がわかんない》んだ。バス路線はあちこちにたくさんの路線があって、土地勘のある人間じゃないとわからないからね。その上、JRと地下鉄は路線数が決まっていてわかりやすい。札幌以外の住民もよく使うからね』



確かに、バス路線ってどこの地域でも土地勘のないヤツには把握するのには時間がかかるだろう。

それに、市外の住民が札幌に来る場合は、だいたいの主要の建物は地下鉄やJR沿いにあるからな。

地下鉄やJRの路線は、むしろ市外の住民には周知されているだろう。



『…つまり、連中はこの札幌に土地勘がない。だから、地下鉄とJRで限定するしかなかった。…というか、札幌には地下鉄とJRしかないって思ってんじゃないかな?それぐらい札幌のことを知らないマヌケなよそ者。』



土地勘がないため、道がわからないよそ者…!



『それを裏付ける真実のひとつがこれ。…菜月、さっき俺が送った画像開いて』

「はい」



菜月は再びタブレットをいじっている。

タッチすると、別の画像が現れた。

これは、札幌市内の地下鉄とJRの路線図?

小さい赤いマルが点々とついている駅がある。




『これは、襲撃事件の現場をわかりやすく分布図にしてみたんだ』



地下鉄は乗り換えのハブである大通駅を真ん中に、南北線、東西線、東豊線の3路線が縦横に伸びている。

JRは札幌駅を地下鉄2路線の乗り換え駅とし、学園都市線、千歳線、函館本線が市外へと伸びる。



襲撃事件が起こったという印であるその赤マル。

パッと見て、全体的にその赤マルはあちこちにあるのだが、よく見るとだいたい大通駅より南東の駅に多く分布している。

これは、うちの高校の位置からして、生徒数が多いのもこの地域だからだろうか。



『みんなよく見ていてね。恨みつらみ連中の犯行の赤マルを緑色に変えるよ?…菜月、次』

「はい」



菜月が画面をスワイプする。

すると、先ほどの路線図と同じ画像が出てきた。

赤マルの中に、緑のマルが増えている。



「…ん?」

「これ…」



その分布図を見た女子生徒たちが、ざわついていた。

いや、俺もちょっとびっくりだ。

まさか、こんなに綺麗に結果に出るとは…!



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