王子様とブーランジェール



確かに。一見、私立の進学校、第二高校の制服に見える。

だけど、よく見ると完全に違う制服だ。

見たことのないデザインである。



「集計ついでに顧問に言われて調べたところ、この制服を着ていると思われる連中の犯行が11件でござい!全て恨みつらみ発言をかました連中のカテゴリーに入ってたよ」

「何っ!」

それはもう、クロじゃねえのか?!

じゃあ、こいつらが主犯格…!



『そこで、次は地下鉄とJRの謎に入ろう。なぜ、連中は地下鉄やJRの駅に潜んで生徒を狙ったか、だ。この数だともう計画的にあえて駅に潜んでいたとしか思えない』

あえて、駅に潜む理由…?



すると、女子生徒の一人が「はいっ!」とまたしても挙手をする。

「高校生はやっぱり交通機関使うから、地下鉄張り込んでいたら誰かかんかいるだろう、みたいな?」

「不良のくせに単車持ってないんじゃない?単車ないと逃げられないしょ」

「不良、道がわかんないんじゃね?だから公共機関使ってんだよ。ださっ!」

次々と女子生徒から意見が飛び出る。

不良、随分な云われようだな?メタクソじゃねえか。

その様子を見ておかしいのか、顧問…酒屋の兄ちゃんは笑っているようだ。

スピーカーから爽やかな笑い声が響く。



『ははっ。いいねいいね。さすがデビル達。俺もそう思った』

「え?」

『確かに、地下鉄やJRは学生の足だ。利用者も多いから遭遇率も高いと考えられるだろう。でも、それだけにしてはあまりにも徹底しすぎているような気がするよ。この数』

それもそうだ。

徹底して駅に潜んでいるこの不自然さは、計画的に実行しているような。

『しかし、そこは逆の発想でいくと…《駅に潜まざるを得ない》だ』

「潜まざるを得ない?…あっ!」

「どうした夏輝?」

思わず声が出てしまった。

でも、わかってしまった…!

『夏輝はわかったみたいだね?さすが俺の舎弟』

「………」

舎弟になった覚えはない。




『そう、《逃げられない》《道がわかんない》んだ。あえて駅にへばりつくような真似をしているのは。犯行に及んだ後、さっさとずらかって駅に入り乗り物に乗ってしまえば、足が付きにくい。《逃げられない》ことはない』




そうだ。

この連中は、自分たちの『逃げ道』をつくるために。

比較的本数の多い、地下鉄、JRの駅に潜んで、犯行に及んでいた。

犯行に及んだ後、すぐ逃げるために。



< 522 / 948 >

この作品をシェア

pagetop