王子様とブーランジェール
確かに。一見、私立の進学校、第二高校の制服に見える。
だけど、よく見ると完全に違う制服だ。
見たことのないデザインである。
「集計ついでに顧問に言われて調べたところ、この制服を着ていると思われる連中の犯行が11件でござい!全て恨みつらみ発言をかました連中のカテゴリーに入ってたよ」
「何っ!」
それはもう、クロじゃねえのか?!
じゃあ、こいつらが主犯格…!
『そこで、次は地下鉄とJRの謎に入ろう。なぜ、連中は地下鉄やJRの駅に潜んで生徒を狙ったか、だ。この数だともう計画的にあえて駅に潜んでいたとしか思えない』
あえて、駅に潜む理由…?
すると、女子生徒の一人が「はいっ!」とまたしても挙手をする。
「高校生はやっぱり交通機関使うから、地下鉄張り込んでいたら誰かかんかいるだろう、みたいな?」
「不良のくせに単車持ってないんじゃない?単車ないと逃げられないしょ」
「不良、道がわかんないんじゃね?だから公共機関使ってんだよ。ださっ!」
次々と女子生徒から意見が飛び出る。
不良、随分な云われようだな?メタクソじゃねえか。
その様子を見ておかしいのか、顧問…酒屋の兄ちゃんは笑っているようだ。
スピーカーから爽やかな笑い声が響く。
『ははっ。いいねいいね。さすがデビル達。俺もそう思った』
「え?」
『確かに、地下鉄やJRは学生の足だ。利用者も多いから遭遇率も高いと考えられるだろう。でも、それだけにしてはあまりにも徹底しすぎているような気がするよ。この数』
それもそうだ。
徹底して駅に潜んでいるこの不自然さは、計画的に実行しているような。
『しかし、そこは逆の発想でいくと…《駅に潜まざるを得ない》だ』
「潜まざるを得ない?…あっ!」
「どうした夏輝?」
思わず声が出てしまった。
でも、わかってしまった…!
『夏輝はわかったみたいだね?さすが俺の舎弟』
「………」
舎弟になった覚えはない。
『そう、《逃げられない》《道がわかんない》んだ。あえて駅にへばりつくような真似をしているのは。犯行に及んだ後、さっさとずらかって駅に入り乗り物に乗ってしまえば、足が付きにくい。《逃げられない》ことはない』
そうだ。
この連中は、自分たちの『逃げ道』をつくるために。
比較的本数の多い、地下鉄、JRの駅に潜んで、犯行に及んでいた。
犯行に及んだ後、すぐ逃げるために。