王子様とブーランジェール




突然目の前に降りかかってきた真実は、あまりにも重く、苦しいものであり。

まさかな?嘘だろ?なんて。

受け入れ難くて、頭の中が真っ白になる。

言葉も出てこない。




すると、パソコンのキーボードを叩く音が聞こえ始めた。

菜月がパソコンを使いだしたようだ。



「ナツキくん…神田が彼女たちに指を踏まれたのは、球技大会の前日です」

「………」

球技大会の前日…そこは、桃李が言っていたことと相違はないのか。



「律子がその時ちょうど、神田に用があって探していたところ、四階B教室で神田が2、3年の女子複数名に囲まれて因縁をつけられているのを発見したそうです」

藤ノ宮が、見つけた…?

その藤ノ宮は、まだ俺を睨み続けている。

余程、俺に言いたいことがあるようだ。

しかし、その口はまだ開かず。

菜月が話の続きを進めていた。



「律子が直ぐ様間に入って連中を追い払いましたが、その時すでに、神田の指は何度も踏みつけられた後で、赤く腫れ上がっていたようです。骨は折れてないようですよ?」

「打撲だ。打撲」



骨は折れてない?打撲?

因縁つけられた…?



「球技大会の期間は、一人になったところを狙って連れて行かれ、ナツキくんと幼なじみだからって調子に乗るな等の妬みたっぷりの罵声を浴びせられながら、どつかれたり、ビンタされたり、蹴られたりしてたようです」



なぜ、桃李が狙われたんだ…?

なぜ、桃李が妬みの対象になるんだ?

学校の噂になるほど、俺達一緒にいるか?

…まあ、幼なじみだから。気の知れた関係ではあるから、それなりに話はするさ。

でも、それじゃあ…幼なじみはダメなのか?



なぜ、なぜ、と。

俺には理解し難いことばかりで。

頭がごちゃごちゃになったり、機能停止して真っ白になったり。



そして、考えれば考えるほど…イライラしてきた。

なぜ、こんなことが起きたのか。






『指?…おまえ、何やってんだ!気を付けろ!』

『ご、ごめんなさい…』





気付かなかった自分自身も、腹立たしい…!




なぜ、この事をこいつらから聞かされて初めて知るんだ?


…なぜ、気付かなかった?!




「…聞いてねえぞ…」



わかってはいるけど。

信じられなくて、否定したくなる。



「…聞いてねえぞこんなこと!だって…だって!桃李は何も俺には言ってなかったんだぞ!」



桃李が、俺のせいで?

ケガさせられた?

…何で、何でこんなことになるんだよ!



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