王子様とブーランジェール




「な、何で止めてくんなかったんだよ!何で…!」



何で、そこでちゃんと説明してくれなかったんだ!

『それは違う』って、桃李の思い違いを修正してほしかった。

他人任せは良くないとは思っているけど。




「『夏輝が全部悪いから桃李は悪くない』って言ったんだけど…全然話聞かないで、行っちゃった」

「………」



いつもの暴走具合、全開か。

開いた口が塞がらない。

俺が全部悪い…そりゃしゃあねえな。それが事実だ。

桃李のせいでは全然ないことは確かだから、そこは何とでも否定しておきたい。桃李本人に。



とりあえず、桃李を探しだして、直接話をした方が丸く治まって効率が良さそうだ。



だけど…ちっ。どこにいるんだか。

何で、こんなことになるんだか…。



その居場所を突き止めようと、本人と連絡を取るべくポケットからスマホを取り出す。



「…何で、関わらないのをやめたんだ?」



番号検索していると、理人の低く落とした声が耳に入った。

そうだ。言ってなかった。



「考え直した。やっぱ俺には無理だ。桃李には謝る。きちんと話す」

「…桃李がどれだけ傷付いたのか、わかってんのか?」

「………」

思わず口をつぐんでしまう。

痛いところをバッサリ突いてくるな。

それは…俺だってわかってるつもりでいるけど。

だけど、そこはもう怯まない。

「わかってるつもりではいるよ。俺のせいであんな殴る蹴るのひどい目にあったんだ。だから、謝る」

「…は?」

「え?」

「何だよ…わかってると思ったら、全然わかってねえじゃんか?…このゲロしゃぶヤロー」




(………)



…あれ?

俺…ちゃんとわかってるよね?



理人と話が食い違っていることに、首を傾げる。

だが、その様子をシラケた目で見られていることに気付いた。

え。何で…!



「本っ当に、自分のことには鈍感で困るな?そこがすげえムカつく」

「自分のことに鈍感?!…何だよ!」

何だかよくわからない文句をつけられて、イラッとする。




「…俺が言いたいのは、夏輝に『もう関わらない』『もうパンダフルにも行かない』って言われて、桃李がどれだけ傷付いたと思ってんのか?このゲロしゃぶヤロー!ってことなんだけど」

「…え?」

「え?じゃねえよ。天然か。ムカつくな」

「天然!…俺は天然じゃない!」


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